発足から2週間の新生ハリル・ジャパンが後半の2発で初陣を飾る。

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2015.3.27
キリンチャレンジカップ2015
日本 2-0 チュニジア
[得点]
日本:78分岡崎慎司、83分本田圭佑
チュニジア:

|就任から2週間で見せた新指揮官の“独自色”
日本サッカー界が揺れたハビエル・アギーレ前監督の解任を経て、3月12日にヴァヒド・ハッリルホジッチが日本代表監督に就任した新生日本代表は、大分スポーツ公園総合競技場(大分銀行ドーム)でそのリスタートを切った。
就任からわずか10日後にバックアップメンバーを含む43人が招集され、そのうちの31人(負傷で1人離脱)が、4日間の合宿を経て臨んだ初陣。目前に迫ったW杯アジア予選に向け、ハリルホジッチ監督はどのようなサッカーを見せるのか? 前日の記者会見では「新戦力を積極的に試す」と語っていただけに、先発メンバーには誰が名を連ねるのか? 数々の注目を集める中、ハリル・ジャパンはFIFAランキングで格上のチュニジアを相手に、その片鱗を見せた。
新指揮官の“独自色”は、まずその先発メンバーに表れた。GKに権田修一、4バックのDFには右から酒井宏樹、吉田麻也、久々の招集となった槙野智章、そして左SBには初招集でいきなり先発デビューとなったガンバ大阪の藤春廣輝を起用。中盤の底はキャプテンを務める長谷部誠と山口蛍が並び、右サイドに永井謙佑、トップ下に清武弘嗣のロンドン五輪代表コンビを配した。左サイドには武藤嘉紀が入り、1トップには川又堅碁を据える4-2-3-1の布陣。本田圭佑や香川真司、岡崎慎司ら、これまでのスタメン常連組を外し、前日会見での公約をいきなり実行する大胆な選手起用だった。
そして、“独自色”は立ち上がりからのプレーでも示されていた。永井、武藤、藤春といったスピードのある選手を使い、少ないタッチで素早く前線に縦パスを供給してカウンターを狙う。それは何か、タッチ数や攻撃にかける時間に制約があるかのように、日本の選手たちはマイボールにした途端、相手ゴールに向かって一斉に攻撃のスイッチを入れるプレーを繰り返していた。この縦への動きと素早い攻撃、手数を掛けずに攻め込むのが、ハリルホジッチ・サッカーの大きな特徴と言える。
試合は、序盤こそお互いの出方をみる展開だったが、清武と永井のロンドン五輪組を中心に右サイドから攻撃を仕掛け、徐々にホームの日本がリズムを掴み始める。22分には左CKから清武がクロスを入れ、川又がクロスバー直撃のヘディングシュートを放つ決定的なチャンスを作り出した。さらに32分には、右サイドのスローイングから相手守備陣を崩して長谷部が深い位置から絶妙なマイナス方向へのパスを清武に送ってシュートに持ち込むが、ゴールを奪えない。
短い合宿期間と新しい選手が多いこともあってか、ややコンビネーションの精度を欠いた日本は、前半をスコアレスで折り返した。

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|結果を出したのは、やはり途中から出場した“彼ら”
随所に速さと巧さ、そしてゴール前での強さを見せたチュニジアだったが、日本の守備については、前後半を通じて大きなピンチは少なかった。相手の攻撃が単発だったことや、日本の前線が積極的にチェックを仕掛けてチュニジアの思い通りにさせなかったこともあるが、まずまずの安定感は及第点だろう。吉田と槙野はクリア時にお見合いするシーンもあったが、シンプルに前線へクリアすることで相手に攻撃のリズムを作らせなかった。バックパスを受けてからも前へ、前へとボールをつなぐ姿勢を見せ、自陣でのボール滞在時間を長くしなかったことで、守備に安定をもたらしたことは評価できる。
攻撃陣は前半同様、後半もペースを握りながら決定的なチャンスは少なかった。そんな中で迎えた60分。指揮官は最初の交代カードを切る。清武と永井を下げ、本田と香川の2人を同時に投入したのだ。この交代で日本は一気に攻撃のスイッチが入り、次々と決定機を作り出すことに成功する。
66分には、右CKから本田が入れたクロスに吉田がダイビングヘッドで飛び込んでゴールネットを揺らすが、これは直前のファールを取られてノーゴール。そして、72分に川又と武藤に代わって代表FW歴代トップとなる90試合目の出場となった岡崎と、代表初キャップとなった宇佐美貴史をピッチに送り込むと、ついにゲームは動いた。
78分に右サイドの岡崎から中央の香川を経由して、左サイドへ流れた本田へパス。深い位置まで転がったボールに、体勢を崩しながらも食らいついた本田はファーサイドへクロスを入れると、最後は岡崎が頭で押し込んで、ハリルホジッチ監督に日本代表監督としての記念すべき初ゴールをプレゼントする。
さらに83分には、相手ペナルティエリア手前の正面でボールを持った宇佐美がヒールパスで岡崎にパスをつなぎ、さらに岡崎は左サイドに流れた香川へパスをつなぐ。ボールを受けた香川のコースを狙ったシュートはGKに弾かれるが、ファーサイドに待ち受けていた本田がこぼれ球を押し込んで追加点。リードを2点に広げる。
勢いに乗った日本は終了間際の89分にも決定的なチャンスを迎えた。香川からの見事なスルーパスを受けた宇佐美が左サイドへ流れてGKと1対1になり、自らシュート。しかし、対角線のゴール右隅を狙った緩い弾道のボールは、惜しくもポストを叩いてしまう。残念ながら3点目はならなかったが、初代表の宇佐美としては自らのスピードとシュートへの積極性をアピールするには十分なインパクトを見せたと言っていいだろう。結局、試合はそのまま2-0で終了し、新生日本代表はハリルホジッチ監督の初陣を勝利で飾った。

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|主力常連組を脅かすには“結果”が必要
これまでの日本代表とはひと味違う、フレッシュなメンバーを起用して臨んだ一戦だったが、川又、永井、藤春、槙野、山口といった初代表あるいは久々の代表だった面々は、まずまずの結果を出したと言える。しかし、安定して見えた守備陣は、チュニジアの攻撃陣が思ったほどのプレーではなかったために危険な場面が少なかったことを考えれば、もうしばらく様子見が必要かもしれない。そして、新戦力たちもあくまで“まずまずの結果”であり、これまでの主力を脅かすまでの結果が残せなかったことは、次戦への課題だろう。
得点が生まれたのは、本田、香川、岡崎を投入してからであり、実際にゴールを記録したのも岡崎と本田だ。さらに、終盤の84分には今野泰幸、右ヒザに故障を抱える内田篤人がピッチに送り出されている。彼らはいずれも、2代前のアルベルト・ザッケローニ監督の時代も主力だったメンバーだ。戦力の底上げ、世代交代を図るのであれば、やはり今やビッグネームとなった常連組の出番を奪うほどのインパクトある結果が必要なのは言うまでもない。
W杯アジア予選という本番が目前に迫っていることを考えれば、大きなメンバー入れ替えは難しいかもしれないが、それでも門戸を広く開いているハリルホジッチ監督の下では、決して不可能ではない。縦への推進力を大きな特徴とするチーム作りが新体制の意図として感じられるだけに、何はともあれチームだけでなく選手たち自身も“結果”がますます求められることは間違いない。

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(文/宮坂正志)


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