真の強豪になりきれないマンチェスター・シティに求められる欧州での結果

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|3年で二度のリーグ優勝も欧州では結果を残せず
12月8日、マンチェスター・シティは、2億ポンド(約370億円)もの巨費を投じたトレーニング施設、『シティ・フットボール・アカデミー』をお披露目した。シェイク・マンスール氏(オーナー)の本気度がうかがえる。2008年、オーナーに就任した当初から、「カネ持ちの道楽」「すぐに飽きる」などなど、外国人の新参者を懐疑的、いや近視眼的にしかとらえてこなかった英国メディアも、見方を変えなければならない。

前線にはセルヒオ・アグエロを擁している。クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)、リオネル・メッシ(バルセロナ)にまさるとも劣らないゴールゲッターで、市場価格は4300万ユーロ(約62億円)円を超えた。また、DFラインにヴァンサン・コンパニ、パブロ・サバレタ、中盤にもヤヤ・トゥーレ、ダビド・シルバなど、シティは要所に好タレントを揃え、過去3シーズンでプレミアリーグは二度優勝。同じ街のライバル、マンチェスター・ユナイテッドとの立場を逆転した。

ところが、チャンピオンズリーグ(以下CL)はUEFAの係数が低いため、毎シーズンのようにグループステージから強豪との対戦が相次ぎ、ベスト16に進出するのが精いっぱいだ。今シーズンもバイエルン・ミュンヘン、ASローマ、CSKAモスクワに苦しめられた。

なかでもCSKAモスクワ戦はアウェイで2点差を守りきれずに引き分け、ホームではヤヤ・トゥーレ、フェルナンジーニョが退場になり、サミル・ナスリも一発レッドに値するラフプレーに走るなど、精神面の脆さを露呈して1-2の敗北を喫している。最終節のローマ戦で2-0の勝利を飾り、辛くも決勝ラウンドに進出したが、グループステージ全体の試合内容は褒められたものではなかった。攻撃に人数をかけすぎ、空いたスペースを利用される悪癖は相変わらずだ。戦術、戦略よりもパッションを重んじるプレミアリーグでは通用する闘い方も、すべてがハイレベルのCLでは雑すぎる。

バイエルンのシャビ・アロンソが「CLで優勝するようなチームは、少なくとも三通りのフォーメーションを会得しているが、シティはつねに4-4-2。対策は立てやすい」と語ったように、シティは戦術的な多様性、柔軟性が求められているようだ。
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|クラブ愛溢れる戦士というよりカネで集められた傭兵
さて、英国『インデペンデント』紙のイアン・ハーバート記者が、9月21日付の原稿で次のようにシティを評した。「クラブは選手を必要としているが、選手はシティを必要としていない」。外国人の“傭兵”にとって、シティは愛すべきクラブではなく、ひとつのステージに過ぎないという意味だ。CL優勝のためにカネで集められたのだから、そのターゲットが遠ざかれば遠ざかるほど、目的意識は薄れていく。異なるカネの臭いをかぎつけた数人の主力が、さっさと退団しても不思議ではない。

しかも過去2シーズンの支出が収入を上まわり、フィナンシャル・フェアプレー(以下FFP)に抵触した。その結果、①6000万ユーロ(約87億円)の罰金。4500万ユーロ(約58億円は執行猶予)。②チャンピオンズリーグのA登録リストを25名から21名に削減。③今後2年間、選手の年俸が現状を上まわることを禁じる。以上三点の厳罰が、今年の5月にUEFAから科された。

この5年、シティは強化に6億ポンド(約1110億円)近くも費やしているが、カネで横っ面をひっぱたくような補強はもはや不可能だ。即戦力の大物を補強する場合は、同等の選手を放出しなければならない。したがって、今後はブランドイメージを確立し、好選手を引き寄せる……。早急なシフトチェンジを迫られる。ここがシティのポイントだろう。

莫大な負債を抱えているにもかかわらず、レアル・マドリーは2013-14シーズンの総収入が6億390万ユーロ(約822億円)に達した。ユナイテッドも4億3000万ポンド(約795億5000万円)を記録した。一方、シティは負債を抱えておらず、過去最高となる3億4700万ポンド(約641億9500万円)の収益を上げたとはいえ、ヨーロッパの両巨頭には遠く及ばなかった。

ブランドイメージは一朝一夕にして築けるものではなく、イメージアップのために最高のステージとなるチャンピオンズリーグで苦戦が続けば、アグエロ、シルバといったスター選手の慰留も難しくなる。主力の多くが20代後半で、いち早く結果を求める世代であることも気がかりだ。

かつて、莫大な債務に悩んでいたバルセロナを黒字転換させたファン・ソリアーノ(現シティCEO)の手腕は認める。彼は有能なビジネスマンであり、いつの日かシティのブランドイメージを確立するに違いない。冒頭で挙げたマンスール・オーナーの姿勢も高く評価できる。

ただし、彼らの野望が成就するまで、まだまだ時間が必要だ。レアル・マドリー、ユナイテッド、そしてバイエルンといった古豪、名門は長い歴史のなかで数々の煮え湯を飲まされてきた。シティやパリSGのような新興チームにのみFFPを適用したUEFAの方向性も踏まえると、マンスール、ソリアーノ両氏はまだまだ“青い”といったところか。
(文/粕谷秀樹)
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